2017年6月28日水曜日

ずっと保留にしていた文章「Tabi no tochu ~第什一夜~」レポート

泰尊から「よしみさんのレポートも読んでみたい」と言われ、もちろん書いた。

けれど、いろいろな人のレポートなどを読むにつれて、あれこれ考えすぎてしまった。そして、アップするタイミングを完全に逃し続け、もういつ投稿したらいいのかよくわからなくなった。それでもmacを開くたびに、この文章が書かれたファイルが目に留まる。気になる。(以下、エンドレス)。しかしながら、それも終わり。

なぜか今日アップする。やましたよしみの「Tabi no tochu ~第什一夜~」レポート。どうぞご覧あれ。

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去る3月20日(月・祝)に【B】にて開催された、泰尊が主催のイベント「Tabi no tochu ~第什一夜~」。

その日の夜、自宅に帰って片付けを終えた夫と話していると、自然と涙が流れた。張りつめていた緊張の糸が切れ、イベントを振り返り、喜びと感謝の気持ちとで感無量。翌日にFacebookを開くも、まともに文章を書くことすらできなかった。けれど、私には【B】の人間として、ライターとして、この日のことを記しておく必要ある。やましたよしみの「Tabi no tochu ~第什一夜~」の忘備録。ぜひお付き合いいただきたい。


人口400人ほどの限界集落にある薩摩川内市西方町の【B】。
あいにくの雨模様にもかかわらず、あの日【B】には出演者や出店者を含め100名以上もの人が集った。生後まもない赤ちゃんから年配の方々まで、知った顔も知らない顔も、近くからも県外からも、本当にさまざまな人たちが足を運んでくれた。

音と、人と、空間とが、交錯した「Tabi no tochu ~第什一夜~」。

さまざまなジャンルの音楽がそれぞれに人を魅了する。築数十年、古い建物である【B】が音に揺れるようだった。ライブ中も人々は思い思いに過ごす。音に浸る人、子どもと戯れる人、食事を味わう人、お酒を浴びる人、談話する人ーー、誰もが空間に溶け、ただ今を生きる。排他や争いとは無縁、愉しむことが当たり前の時間であり、空間。

私は人生初のドリンク係「よしみ100%」の位置から、その風景を見つめていた。(ちなみに、いつの間にか決っていた店名「よしみ100%」については、と泰尊と夫・山下冗談にあらためて物申したいがここでは明言せず、とする)

あの日、目に焼きついた場面がいくつかある。
夫が歌う姿を柱に背をもたれ、両手であたたかいほうじ茶の入ったカップを包みながら聞き入る妻の後ろ姿。子育てに奮闘するお母さんが弾け飛ぶように歌う姿。緊張を吹き飛ばすかのようにラップをする若手と、そのあと声をかけたときの尖った笑顔。故郷で歌えることの喜びを繰り返し伝えてくれた、あたたかなシーン。美しい音を奏でたあと、酔いつぶれて座る人の色柄のコントラスト。農家の人が農家の人のつくったものを買う、言葉の不要な距離。お母さんの腕の中でおっぱいに吸い付く赤ちゃんのフォルム。淡々と粛々と、仕事をする蒼い炎のような無駄のない動き。大きくなったお腹を抱えて仕事と遊びの間を自然と行き来する、愛すべき妊婦の佇まい。床に絵を描き、甥に「カッパ」と呼ばれて微笑むカッパのカッパっぷり。来られなかった妻のためにシルバーを叩く男の広くやさしい背中。キャンドルのあたたかくも切ない、美しい灯火。踊る子ども、遊ぶ子ども、泣く子ども、眠る子ども、すべての子どもたちの光ーー。

情熱で人は動く、と教えてくれた泰尊。

大切なそれぞれの人生の幾ばくかの時間を【B】で過ごしてくれた人たちへ、あらためて感謝の気持ちを伝えたい。ありがとう。

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Photo by 福留敦巳